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2011/02/08 【カンボジア、タイ国境で、停戦合意機能せず】

【カンボジア、タイ国境で、停戦合意機能せず】

宗教的な背景が異なる民族が相争う例は、古今東西数多くあります。今回のタイとカンボジアとの紛争も顕著な例と言えます。

今回、紛争地帯となっているヒンズー教のプレアビヒア遺跡は、タイとカンボジア国境にあって帰属がはっきりしていませんでしたが、1962年に国際司法裁判所がカンボジアのものだと認定。

しかし、カンボジア側からは、この寺院に直接アクセスできず、この寺院に行くためには国境を抜けてタイ側にまわって拝観しなければならず、カンボジア側の不満は高まっていました。

一方、タイ側は、国境どころか遺跡そのものもタイのものであると主張が強くなり、2008年、カンボジア側がこのヒンズー寺院を世界遺産に登録して認定されたのを機にタイ国内の世論が一斉に反発しました。

タイ側が「国境視察」と称して同地を訪れるなどの挑発行動を続け、タイ・カンボジア間の国境問題に発展していきました。

今回の紛争には、複雑なタイ国内情勢も絡んでいます。

08年に空港占拠事件などでアピシット政権発足の原動力となったPADは、政権の「カンボジアへの弱腰」を非難し座り込みを続けてカンボジアの反発を呼び、今回の衝突の一因となりました。

反タクシン派であるPADは、タクシン氏がカンボジアのフン・セン首相と近い関係にあるため、カンボジアへの強硬姿勢を強めているのです。

このような紛争は、民族や宗教などの背景(コンテクスト)を無視して、政治的な意図で国境線が定められた場合によく起こります。

タイとカンボジアの場合は例に及ばず、アフリカ等でもこのような問題は深刻な問題として、国家経営や国民の生活に深く影を落とす問題となっています。

このような紛争を解決する場合、最初に民族・宗教などの背景部分を考慮に入れて、政策を進めなくてはなりません。

この問題に関して、日本がタイやカンボジアに対して出来ることはそれほどありませんが、紛争が国家間の戦争に結びつかないよう、仲裁など外交面で最大限の努力をする必要があります。