中国は、フィリピンと領有権を争っている南シナ海のスカボロー環礁周辺で、爆撃機による監視飛行を行い、今後も継続する方針であることを明らかにしました(※)。
先の、国際仲裁裁判が、中国による南シナ海の管轄権の主張は違法であるとの裁定を下したことに対し、中国として受け入れない姿勢を示す狙いがあると考えられます。
こうした中国の動きは、国際社会として到底受け入れる訳にはいきませんし、領有権問題の当事国であるフィリピンにとっては、まさに自国の領空に等しい空域で、爆撃機が示威飛行する訳ですから大きな脅威となります。
通常、他国の軍用機が自国の空域に接近した場合、戦闘機がスクランブル発進し、対領空侵犯措置などを行いますが、実は、フィリピンにこうした任務に対応できる戦闘機が事実上ありません。
外国の航空機による現実的な脅威が小さい上に、財政難などから戦闘機部隊を維持できず、約10年に渡り戦闘機を配備していなかったのです。
しかし、スカボロー環礁での人工島造成などの中国による急速な海洋進出に直面し、防空能力の不備に対する懸念が現実のものとなっています。
フィリピンは、昨年になって、ようやく韓国製の軽戦闘機の導入を開始しましたが、部隊運用が可能となるまでに時間が掛かると見込まれていますし、肝心の韓国製の機体もベースが小型の練習機であるが故に要撃機としての能力も十分ではありません。
しかも、搭載している火器管制装置がイスラエル製で、既に同等の装置がイスラエルから中国に渡っているとされており、性能が中国側に筒抜けとなっている可能性すらあります。
フィリピンの新大統領であるドゥテルテ氏が、今後、中国に対してどのような態度で臨むのか見極める必要がありますが、日本としてフィリピンの防空能力向上に協力することを検討すべきではないでしょうか。
日本は、既に洋上監視に使用できる海上自衛隊で用廃となった練習機をフィリピンに貸与することが決まっていますが、整備面などで課題があるものの、退役が決まっている航空自衛隊のF-4戦闘機の貸与などを検討してもいいのではないでしょうか。
※:7月19日付産経新聞http://www.sankei.com/world/news/160719/wor1607190029-n1.html