過日、中国の李克強首相が英国とギリシャを訪問しました。
李首相は、英国では2兆円以上の契約を結んだとされていますし、ギリシャでも6千億円以上の契約を結んだとされます。
英国、ギリシャともに経済的に順風とは言えない状況なので、世界第2位の経済規模に成長した中国の経済力に頼ろうとする思惑が感じられます。
一方で、英国は民主主義国家の旗手とも言える国家ですし、ギリシャは近代民主主義の発祥の地です。
それにもかかわらず、両国とも今回の李首相の訪問では、苛烈を極める中国の人権状況や、中国による威圧的な海洋進出に対し厳しい注文を付けるということはしませんでした。
特に、英国ではこうした英政府の姿勢に対し、国内外から批判の声が上がっていますが、その批判は当然と言えます。
経済力により英国をも抑え込んだとして、中国政府が自信を深めれば、アジアでは一段と中国による横暴が強まることになるでしょう。
これを思うと、6月27日付の日本経済新聞の社説に載っていた、前防衛大学校校長の五百頭氏の「第2次世界大戦の教訓は力をつけて勢いつく国に融和策をとってはならない。途方もなく弾みを与え事態の収拾を不可能にする」という言葉が印象的に残りました。
第1次世界大戦の厭戦気分が残る欧州で、拡張を続けるナチスに融和政策をとってしまい、結果的に多くの犠牲者を出してしまった愚を忘れてはならないと思います。