12月26日に、福島第一原発事故に関する政府の「事故調査・検証委員会」の中間報告が発表されました。この報告書は456人から事情聴取し、507ページに及ぶものです。この中では、政府官邸内のコミュニケーション不足や重要情報の公表の遅れ、東京電力の初動対応で誤認や判断ミスがあったことなどを指摘しています。
しかし、当時の政府首脳らへの聴取は入っておらず、今後年明け以降に聴取を行い、最終報告は来年3月になるとのことです。こうした聴取の遅れは、事故対応の政府の責任者であった菅直人らに、配慮したのではないかと勘繰りたくなりますが、最終報告を待たずに、すでに明らかになったことがあります。
27日付の日本経済新聞によれば、当初菅氏が、東電が「全員撤退」すると聞いて東電に乗り込み、激怒して「撤退するな」と叫んだことを手柄としてとりあげ、「ここで撤退したら首都圏が死の街になると思い、必死で呼びかけた」という菅氏のインタビューを各マスコミが伝えました。この時、多くのマスコミは、それに対する東京電力の反論を無視しています。しかし、報告書によれば、当時の清水社長が「撤退は考えていない」と菅氏に対して明確に否定したにもかかわらず、菅氏は東京電力本店に乗り込んで前述の演説を行ったとのことです。
菅氏は清水社長に確認したにもかかわらず、自分の思い込みで勝手に激怒していたことになります。この件は、菅氏の功名心か政権浮揚のパフォーマンスなのかわかりませんが、事故対応上もっとも基本となる当時の首相官邸と東京電力との連絡体制が問われます。菅氏の責任は重大です。政府の事故調査・検証委員会は、事情聴取で菅氏を厳しく追及すべきです。福島の事故とは直接関係が無いかもしれませんが、菅氏は、止める必要のない浜岡原発まで停止させ、全国的に電力不足を招きました。その結果、社会や産業界に混乱を招いたばかりか、夏には過度の節電による健康被害まで起こしていることを忘れてはなりません。
そして、この件は、マスコミにも責任があります。事実関係を確かめもせず、菅氏を英雄に仕立て上げ、東京電力を一方的に悪者にした罪は大きいといわざるを得ません。