【野党の一部増税意見、首相、与野党党首と個別会談】2011年3月14日 朝日より
菅直人首相は13日、東日本大震災の被災者救援や福島の原子力発電所への対応策をめぐり、大震災後初めて与野党党首と個別に会談した。 首相は自民党の谷垣禎一総裁に協力を要請。谷垣氏は被災地の復興財源のため、増税の可能性も含む時限的な立法措置を検討するよう提案した。
谷垣氏は会談後の記者会見で時限措置の具体的な内容を問われ、「(復興の)財源を国債発行だけで賄うことができるのか。復興支援税制のようなことを考える必要があるかもしれない」と語った。
増税の可能性について、枝野幸男官房長官は記者会見で「今の時点であらゆる可能性を否定しない」としつつも、「検討や分析をしている段階ではない」と強調した。
首相は同日夜の「経済情勢に関する検討会合」で、谷垣氏との会談について「復興には財源が必要だという話はあったが、増税という話は一切ない」と説明した。
1991年の湾岸戦争時には「法人特別税」などで臨時に財源を確保したが、95年の阪神大震災では財源確保の増税は実施していない。
野田佳彦財務相は11日の記者会見で「財政が制約となって災害対策に怠りがあってはならない」と述べ、当面の復興対策費は今年度予算の予備費や新年度の補正予算編成で確保する考えを示している。
引用、以上。
今回、震災のドサクサの中、自民党主導で、民主党も同調して「復興増税」の流れが強まりつつあります。
現在のところ、増税の項目や規模は不明ですが、これを機に臨時消費税増税→恒久的消費税増税の流れも推測され、まさしく震災への「便乗増税」と言える流れが始まっています。
エコノミストらによると、震災被害や停電等のインフラ破壊による日本経済のマイナス成長が予測されていますが、こうした景気悪化の中でのさらなる増税は、国民を苦しめ、一層、景気を悪化させ、税収を減らしていきます。
経済学者の高橋洋一氏も「菅・谷垣『臨時増税』検討に意義あり」として、本日、以下の論稿を緊急寄稿しています。(以下、一部抜粋)
【菅・谷垣「臨時増税」検討に意義あり――「震災増税」ではなく、「寄付金税額控除」「復興国債の日銀直接引受」で本当の被災地復興支援を】
2011年03月14日(月)現代ビジネス 高橋洋一氏
もちろん、復興策は絶対に必要だ。その規模は直感的には10兆円くらいだろう。しかし、その財源として臨時であれ増税は不味い。
この危機に増税とは理解に苦しむ。この災害時に増税しか見えないのかと思うと、一国民として悲しくなる。国民の共助を求めるなら、災害寄付金を税額控除するのが正しい方向だろう。
日本の地震リスクを強調して、この機に乗じて日本国債にアタックを仕掛けてくるという外国ヘッジファンドの噂もある。そうした冷酷なハイエナに塩を送るような増税発言だ。
では、復興策の財源といえば、もちろん国債である。しかも、日銀直接引受がいい。
というのは、今はデフレであるので、マネーが日本国内では不足している。被災地には当然潤沢の資金供給が必要になるが、それを全国レベルで対応するためにも、日銀が直接引受によってマネーを増やすのが正しい方向だ。
日銀直接引受の分の国債は、実質的に財政負担にならない。例えば、その国債に対して金利を政府が日銀に払ったとしても、その分は日銀から政府への国庫納付金になるからだ。
そのデメリットは、全国レベルでのインフレになるという点だが、今はデフレであるので、その弊害は少ない。被災地での物資不足に対して、局地的な価格上昇の可能性はあるが、それに対しては不当価格値上げがないかどうかはしっかりと行政で監視する必要がある。
日銀直接引受というと、必ず財政法で禁止されているという反論がある。
たしかに、財政法第5条では、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」と書かれている。
しかし、その後に「但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」と書かれている。
しかも、あまり知られていないが、すでに衆議院を通過した来年度予算の予算総則において、日銀保有国債分については、「財政法第5条ただし書の規定により政府が平成23年度において発行する公債を日本銀行に引き受けさせることができる」と書かれている。
要するに、復興国債を発行して、国会議決でやれば日銀直接引受はできるのだ。
日銀直接引受は、昭和恐慌時高橋是清が行い、世界でもいち早く脱出できたので、世界的にも評価の高い政策だ。超巨大地震という国難であるので、従来にない発想で政治主導が求められる正念場である。
なお、14日、15日は日銀の政策決定会合がある。日銀自ら直接引受の用意が発言すれば、それこそ歴史に残る偉業となるだろう。日銀も柔軟な発想が必要だ。
高橋氏の抜粋は以上です。
復興資金は必要ですが、これを機に増税して、苦境にある国民や日本経済にさらに重い負担をかけることは望ましくありません。
高橋洋一氏のアイディア以外にも、子ども手当やその他のバラマキの廃止、徹底的な金融緩和、官民共同の復興ファンド、政府紙幣の発行等、政府はあらゆる手段を検討すべきです。
また、あわせて復興に向け、東北地方の防災未来都市建設、交通革命、新エネルギー産業等、今こそ、前向きの明るい“未来ビジョン”を打ち出し、国民を励ますべきです。