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2011/03/12 【日本はオランダ型農業輸出国になれる】

【日本はオランダ型農業輸出国になれる】『エコノミスト』3/8号 川島博之(東京大学大学院農業生命化学研究科准教授)より

オランダは決して大きな国ではない。人口が1600万人で国土は日本の約9分の1に過ぎない。

そのオランダが農業物貿易で黒字なのは、チーズや野菜が中心の“加工貿易”を行っているためである。

ゴーダ・チーズをご存じだろうか。ゴーダとは、オランダのロッテルダム郊外の町の名前である。

日本でも鹿児島県黒豚や宮崎地鶏は全国銘柄だが、ゴーダ・チーズは世界的なブランドになっている。

オランダは飼料をフランスなどから輸入して、畜産物、それも牛乳よりチーズを輸出して利益を上げている。

また、コメや小麦は1ヘクタール(1万平方メートル)で数トンしか取れないが、室内で温度などをコンピュータ制御して行うオランダのトマト栽培では、1ヘクタール当たりの収穫量は480トンにもなる。

価格も高い。1トン当たりの生産者価格は小麦が237ドルであるのに対して、トマトは996ドル(08年)。単位面積当たりの生産額は、小麦とは比べものにならない。

だが、加工貿易を行うために、食料自給率は低い。オランダの穀物自給率は18%(08年)に過ぎない。

日本の農産物貿易は539億ドルの赤字になっている。先進国で最も赤字が大きい。しかし、その原因は、輸入が突出して多いためではない。

米国やドイツの輸入額は日本を大きく上回っている。日本は輸出が少ないために、赤字額が大きくなっているのである。

国土が狭い日本が、農産物貿易で黒字国になろうとするのならば、オランダ型を目指すべきだ。

広い土地を必要とする穀物は輸入して、付加価値の高いブランド農産物を輸出するのである。

そのためには、自由貿易が欠かせない。オランダはEU(欧州連合)に入っているために、4億人もの市場を相手にして、加工貿易型農業を展開することができるのだ。

日本にとってTPPへの加入はまたとないチャンスである。

広い土地を必要とする農産物を日本で無理に生産する必要はない。飼料穀物や小麦などは海外から輸入すればよい。

オランダがヨーロッパ型食生活のEU圏を市場にして成功したように、日本もアジアを有力な市場として農業を発展させることができよう。

TPPを後ろ向きに捉えるのではなく、日本農業再生のチャンスと考えるべきである。

引用、以上。

2007年統計で農産物の純輸出額が最も多い国は、意外にも米国ではなくオランダです。

世界で一番強い農業国は、国土は日本の約9分の1に過ぎないオランダなのです。オランダの農地面積は110万ヘクタールと日本の4分の1しかありません。

オランダ農業が強い秘密は、日本が工業で行っているように、加工貿易をしているためです。

オランダは近隣のフランスやドイツから飼料用の小麦を輸入して家畜を育て、畜産物を製造し、それを輸出しているのです。

オランダは安い家畜飼料を周辺国から購入して牛乳を作り、それを輸出するのではなく、付加価値を高めたチーズの輸出によって利益を得ています。チーズの輸出額は29億ドルです。

また、トマトが15億ドル、トウガラシが11億ドルなど、付加価値の高い野菜の輸出も盛んです。

日本は気候、土壌、水資源と、世界有数の農業好条件に恵まれています。また、IT、バイオ、代替エネルギー、素材などの世界有数の日本の最先端の技術を農業技術に応用すべきでと考えます。

農業を「伝統産業」として“聖域化”するのではなく、企業家的発想で他産業の英知を結集し、付加価値の高い「稼げる農業」「輸出する農業」へと転換を進めていくべきではないでしょうか。