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2016/08/26【武器輸出の際の教訓】

 フランスが海外に輸出している潜水艦の機密情報が大規模に流出した疑いが持たれています(※)。
問題の潜水艦はフランスが建造しインド海軍に納入したもので、同型艦はマレーシアやチリも導入しています。

 フランスの潜水艦を巡っては、先にオーストラリアの次期潜水艦の選定で、下馬評の高かった日本の潜水艦を破りフランスの潜水艦が採用されましたが、今回、機密情報が流出した潜水艦とは種類が違うとされています。

 しかし、現代の潜水艦は様々な技術の集積で建造されており、今回機密情報が流出した艦とオーストラリアが採用した艦とでは、使われている技術が全く異なるということは考え難い状況です。

 オーストラリアの次期潜水艦の導入は、海洋進出を強める中国軍への対応も念頭においたものですが、今回の機密情報の流出先は中国であることが強く示唆されます。
オーストラリアの安全保障の要として莫大な予算を投入する次期潜水艦導入計画にとって痛手と言えるのではないでしょうか。

 この問題は、武器輸出を解禁した日本にとっても教訓と言えます。
高度な軍事機密を擁する武器を輸出する際は、機密保持に留意すべきであることは、日本の関係者も当然理解していると思いますが、武器輸出経験の豊富なフランスでさえ、こうした失態を犯してしまいます。

 ロシアは、中国などに武器を輸出する際、技術が転用されることを想定して、あえてコピーが困難な部品を使用したり、スペックを落としたいわゆるモンキーモデルを納入したりしています。

 武器輸出三原則の緩和は、日本の防衛産業の発展に寄与すると同時に、世界の安全保障に貢献するものですが、武器を輸出する際はしたたかな戦略が求められます。

※:8月24日付NHKニュースhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20160824/k10010653051000.html?utm_int=news-international_contents_list-items_058
※:8月25日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/world/20160825-OYT1T50062.html