2月
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2016/02/09【リスク分散の大切さ】

 トヨタの国内工場の全ての工場で自動車の組み立てが休止しています(※)。
これは、1月に起きたグループ会社の工場火災の影響で、エンジンなどに使う特殊な鉄の供給ができなくなったからです。

 再開は2月15日からの予定とのことですが、世界最大の自動車メーカーであるトヨタの日本国内の全ての工場の操業停止ですから、関係各所に及ぼす影響は小さくないはずです。
トヨタ関係者の方々も、この事態を解決するために苦慮されておられることと思います。
一日も早い事態の好転を心から祈念します。

 東日本大震災の際は、多くの企業が、現地の工場が被災した影響で、一部の部品の供給ができずに操業の一時停止に追い込まれたというがありました。
携帯端末の充電池が不足し製品の出荷が滞るなど、リスク分散についての備えを更に高めていけなければならないと実感した出来事でした。

 リスク分散の事例として、思い出すことがあります。
第二次世界大戦当時、連合国側がドイツの戦略目標を爆撃する際、ボールベアリング工場を集中的に狙ったということを聞いたことがあります。
ボールベアリングとは、あらゆる工業製品の回転軸部分に使われている部品ですが、やみくもにあらゆる生産拠点を爆撃しても、被害を免れた工場同士がそれぞれの部品を持ち寄れば、生産量は落ちますが、戦車や飛行機などの完成品を生産できてしまいます。
これに対し、ボールベアリング工場だけを集中的に攻撃して全てのボールベアリング工場を破壊してしまえば、他の部品が十分にあったとしても、完成品を製造できなくなってしまうのです。

 製造を集約することによるコスト的なメリットや知的財産保護上のメリットは理解できますが、やはり、平時だけでなく有事の際にもリスク分散は大切ということが分かります。

※:2月8日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160208-OYT1T50072.html