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2011/06/25 【アフガン撤退米政権、軍より世論重視】

【アフガン撤退米政権、軍より世論重視】2011年6月24日 東京より

オバマ米大統領は二十二日、アフガニスタンから来年夏までに、自らが増派した三万三千人の駐留米軍を撤退させると発表した。

巨額の戦費支出に伴う経済悪化や犠牲者の増加により、国民の間で厭戦(えんせん)気分は高まるばかり。

来年の大統領選での再選を強く意識する大統領が治安悪化を懸念する軍の意向を退けた。

「今こそ(アフガンではなく)米国の再建に集中すべきだ」――。

大統領は、対テロ戦争開始以降の十年間で戦費が約一兆ドル(約八十兆円)に上り、米兵死者数が千五百人を超えたことなど、最高司令官としては不都合な数字をあえて列挙し、大統領選に向け、世論重視の姿勢を鮮明に打ち出した。

年内の撤退規模について米軍は五千人、議会有力者は一万五千人をそれぞれ主張。大統領は中間を取って一万人と決めた。

一方、ニューヨーク・タイムズ紙によると、軍側は残る二万三千人について来年秋ごろまでは駐留を続けるべきだと要求。調整は難航したが、大統領は早期撤退論に配慮し、前倒しした。

大統領が「撤退」を「再選」に結び付ける意気込みはそれだけではない。

演説では、来年五月に自らの地元シカゴで、アフガンへの治安権限移譲について協議する北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を開催する方針を表明。

米政府高官によると同時期に主要国(G8)首脳会議も同じくシカゴで開く予定で、外交成果をアピールする舞台づくりにも余念がない。

ロムニー前マサチューセッツ州知事ら大統領選の共和党有力候補が、軒並み米軍の早期帰還を主張していることも大統領の決定を後押ししたとみられる。

こうした風潮に対し、前回の共和党大統領候補だったマケイン上院議員は「孤立主義」と批判。

「過去の過ちを繰り返すべきではない」と警鐘を鳴らす。

確かにアフガンの治安が今後劇的に改善する保証はなく、反政府武装勢力タリバンとの和解交渉やパキスタンとの協力も順調とはいえない。

大統領は「戦争の流れは引き潮に変わった」と強調してみせたが、再び潮目が変わる可能性は否定できない。

引用、以上。

マレン米統合参謀本部議長は23日、下院軍事委員会で証言し、2009年12月の新戦略に基づいて増派したアフガニスタン駐留米軍3万3000人を2012年夏までに撤退させるとしたオバマ大統領の決定は、同議長が当初受け入れられると想定していたものより「積極的であり、リスクも大きい」と批判しました。

オバマ大統領は、再選に向けて、国内の厭戦気分に迎合し、迅速に撤退させる方針を発表しましたが、アフガンからのアメリカ軍撤退は、アフガン政府による治安維持が機能するか否かをよく分析すべきです。

現地の治安維持のカギは、アフガニスタン北部に隠然たる勢力を持っているタリバンをいかにして説得するかにかかっています。

アメリカとタリバンとの対話が今後のカギを握ることは間違いありませんが、関係が悪化する隣国パキスタンやイランとの関連も含め、今後のアフガニスタン情勢は一層、不透明感を増しています。